Sunday, December 22, 2013

【有馬記念】池添オルフェ、天国の少年に贈る…8馬身差の完全V



【有馬記念】池添オルフェ、天国の少年に贈る…8馬身差の完全V
 オルフェーヴルに寄り添いねぎらう池添(撮影・三好信也)
 「有馬記念・G1」(22日、中山)

 歴史的な圧勝で締めた。オルフェーヴル(牡5歳、栗東・池江)が直線で独走状態に持ち込み8馬身差の有終V。6冠馬の馬上で池添謙一騎手(34)は、ファンに向けて高々と右手を突き上げた。波乱に満ちた人馬の物語は、最高の形でフィナーレを迎えた。

 後世まで語り継がれる歴史的名馬は、最終章でも伝説をつくった。直線入り口で早くも先頭に立つと、黄金の末脚がうなりを上げ、8馬身差の圧勝劇。規格外の怪物オルフェーヴルは、最後もあきれるほど強かった。

 「3コーナーを上がっていくところで勝ったと思いました。ラスト1ハロンでムチを入れると反応してくれましたし、すごいスタミナ。直線は乗っていて、本当にすごい馬だなと感じていました」。ウイニングランで“オルフェ・コール”が起こると、池添は右手を高々と突き上げた。

 やんちゃな不良少年は、いつしか大人になり、黄金の馬として完成された。もとより強い絆で結ばれた人馬だけあって、折り合いもパーフェクト。後方4番手から運び、3角からひとまくり。直線は独走態勢に持ち込み、悠然と金色のたてがみをなびかせた。ハラハラする場面などまるでなかった。最高の形で有終の美を飾った。

 天国の少年に贈るクリスマスプレゼントになった。秋のはじめ、池添は重篤な病状を抱える5歳の子どもがいることを知った。聞けばオルフェの大ファンで、いつもその走りに元気づけられているという。何かできることはないだろうか。関係者に協力を仰ぎ、行動に移した。

 放牧先の牧場に招くと、サンデーレーシングの勝負服を着て、坂路を2本駆け上がり、走る姿を見せた。「池江先生もその子のための勝負服をプレゼントしてくれて。照れていたけど、とても喜んでくれました」。その時に有馬記念のVも誓った。残念ながら少年は2週前に天に召されたが、だからこそ余計に負けるわけにはいかなった。約束通り、手向けの勝利を届けた。

 勝利後に振り落とされた新馬戦から3年半。仏遠征時には手綱を譲る悔しい思いもしたが、6度目のG1勝利で、名コンビはとうとう終着の時を迎えた。こみ上げる思いは当然ある。ただ、池添に涙はなかった。「泣かないって決めていたんですよ。最後は笑って送りだそうって。ありがとう、オルフェーヴル。いつか子どもで凱旋門賞に挑戦したいな」。とびきりの笑顔で、最強馬に別れを告げた。

【有馬記念】オルフェ引退式、6万人が「ありがとう」



【有馬記念】オルフェ引退式、6万人が「ありがとう」
夕闇に包まれた中山競馬場で引退式に臨んだオルフェーヴル。カメラのフラッシュはいつまでも瞬いた(写真:サンケイスポーツ)
 夕闇のターフにオルフェーヴルが現れると、スタンドに残った6万人が大歓声を上げた。午後5時から行われた引退式には、池添騎手を背にこの日着用した(6)番のゼッケンをつけて登場。スタンド前を歩く栗毛の怪物に「ありがとう」「忘れないぞ」と温かい拍手が起こった。

 単勝馬券を握り締めていた川崎市の女性会社員(50)は「私にとっては世界一強い馬。馬券は記念にとっておく」と涙ぐんだ。東京都台東区のアルバイト阿部諒介さん(25)は「圧倒的な強さと、たまに謎の敗北をするところが魅力的だった。(引退後は)強い子供を残してほしい」と話した。

 池添騎手は「もう乗ることはないんだな…とちょっと寂しくなりました。オルフェーヴルには『出会ってくれてありがとう』と言いたい」と感謝した。凱旋門賞制覇の夢を子供たちに託してターフを去る。お疲れ様。そしてありがとう、オルフェーヴル。

【有馬記念】マー君、初の競馬場に大興奮!



【有馬記念】マー君、初の競馬場に大興奮!
表彰式後、オルフェーヴルで優勝した池添謙一騎手(右)と撮影に応じる楽天・田中将大(写真:サンケイスポーツ)
 表彰式のプレゼンターとしてプロ野球・楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手(25)が来場した。観覧席に立ち応援するゴールドシップのぬいぐるみを手にした姿がターフビジョンに映し出されると、12万人の観衆が大いに盛り上がった。

 田中投手は「競馬場に来たのは初めてで、朝から思う存分、競馬を楽しむことができました。有馬記念では目の前を駆け抜ける一流馬の走りとお客さんの歓声で、いつも以上にエキサイトしました。ライブ観戦にすっかりハマりましたので、また中山競馬場へ来たいと思います」と、楽しそうに話していた。

【有馬記念】オルフェ8馬身差V!最強のまま引退



【有馬記念】オルフェ8馬身差V!最強のまま引退
独壇場だ。オルフェーヴル(左手前)はレース史上2番目の8馬身差で圧勝。有終の美を飾った(写真:サンケイスポーツ)
 第58回有馬記念(22日、中山10R、GI、3歳上オープン国際(指)、定量、芝・内2500メートル、1着本賞金2億円=出走16頭)1番人気のオルフェーヴルが、ケタ違いの強さを見せた。8馬身差の圧勝で昨年の宝塚記念以来となるGI6勝目を挙げて、見事にラストランを飾った。タイム2分32秒3(良)。レース後は引退式が行われ、その日のうちに福島県ノーザンファーム天栄へ移動。来春からは種牡馬となる。

 想像をはるかに超えた結末だった。12万を超えるファンが見守る中、王者オルフェーヴルが2着馬に8馬身差をつけて大楽勝。驚愕のパフォーマンスで花道を飾った。

 「オルフェが一番だとアピールしたかったし、自信がありました。オルフェは、世界一強いと思います」。心地よいオルフェ・コールを背に池添騎手が声を弾ませた。

 序盤は後方4番手で、ゴールドシップの直後を追走。1周目の正面スタンド前でも掛かることなく、流れに乗った。ハイライトは、2周目の3コーナー過ぎ。鞍上が軽く合図を送ると、大外から一気にひとマクリ。4コーナー先頭から、直線は独壇場だった。鞍上が内ラチ沿いに誘導した後、右ムチを振るって後続をぶっちぎった。

 「呼吸を合わせて走らせました。少し動くのが早いかなと思ったけど、手応えが十分ありましたから。馬を信じて行きました」と池添騎手が会心の騎乗に胸を張った。

 最強馬の主戦として、酸いも甘いも味わった。ダービージョッキーという最高の称号を得た後は、「毎日がプレッシャーとの戦い」だった。凱旋門賞は2年連続で乗り替わり…。ヤケ酒では傷ついたプライドを癒やせず、「騎手を辞めよう」と思うこともあった。それでも、今春は相棒の鞍上の座を射止めるべく、仏遠征して武者修行するなど、「すべてはあの馬のため」に、エネルギーを注ぎ込んできた。

 パートナーは主戦の思いに応える圧巻の走りで、GI6勝目をマーク。有馬記念の8馬身差は、2003年シンボリクリスエスの9馬身に次ぐ2番目の大きさ。まだまだ現役でやれる…という声も聞こえてくるが、来年からは種牡馬としての大きな仕事が待っている。

 「これまでの名馬と同じように、オルフェも今の時代を築いた馬。オルフェと凱旋門賞に挑むことはできなかったけど、オルフェの子供で叶えばこれ以上いうことはありません」と池添騎手は新たな夢を見すえる。

 最後はハッピーエンドで幕を閉じた。多くのファンに愛された破天荒な最強馬は、永遠に語り継がれていく。

オルフェ有終、独走V 有馬記念



オルフェ有終、独走V 有馬記念
絶対的な1番人気に応え、引退レースで「有終の美」を飾ったオルフェーヴル =中山競馬場(菅原和彦撮影)(写真:産経新聞)
 競馬のグランプリレース、第58回有馬記念は22日、中山競馬場(芝2500メートル)で16頭が出走して争われ、このレースで引退する1番人気のオルフェーヴル(池添謙一騎乗、牡5歳)が2分32秒3で優勝。「有終の美」を飾って1着賞金2億円を獲得した。有馬記念は2011年に次いで2勝目で、GI通算6勝目。

 ファン投票で1位に選出され、単勝1・6倍と絶対的な1番人気に支持された。能力の違いを見せつける圧巻のレースぶり。最後は末脚を伸ばして2着のウインバリアシオンに8馬身差をつけて圧勝した。池添騎手は「本当にお疲れさまでした。僕はオルフェーヴルが世界一強い馬だと思う」と労をねぎらった。

 この日、オルフェのラストランを目に焼き付けようと、中山競馬場には前年の約2倍にあたる865人の徹夜組が訪れた。午前7時半の開門前には5600人を超すファンが並び、入場人員は12万4782人に達した。有馬記念の売り上げは前年比5・4%増の約351億円と“オルフェ狂騒曲”に酔いしれた。

 日本中央競馬会(JRA)によると、有馬記念の好調などを受けて2年連続の増収が見込まれるという。